はぜっくぅーNo144room

 

-----------------(5)困った人たち-----------------

「あ、いらっしゃいませ。」
 そこは小さなオフィスで、女性スタッフが一人いるだけだった。 その直後、

-ずどーん-

 50メートルの巨大娘が転んでひっくり返ったような 振動が起こった。翔は、恐る恐る外を見ようとした。
「あの〜、なにか有りました?」
 女性スタッフは、先ほどの現象を気にもしていないようだ。 翔が先ほど入ってきた入り口から出ようとするとその入口から、 一人の女性が窮屈そうに中腰になって入ってきた。そんな小さな入口では なかったはずだ。つまり、その女性はかなりの長身のはずなのだ。 いや、長身と言うレベルだろうか。あのドアをかがんで無いと 通りぬけられないのだから、2メートルを超えているだろう。 入ってきた女性は翔を気にもせず、たった一人の女性スタッフに話しかけた。
「ツレー、ちょっと見てほしいの。大変な事になったわ。」
(ツレーだって、もしや……)
 そう思った翔は少し前のメールを確認してみた。確かにツレーなどと 言う名前はそう無いだろう。もしかすると自分に間違いメールを送りつけた 相手は彼女だろうか。ツレーと呼ばれた女性スタッフは、先ほど入ってきた チョー長身女性に、
「本部からもこちらに連絡は来ていますが、たしかアーフ・スーツさんですね。 かなり厄介な状況なそうですが……。」
 チョー長身女性、アーフ・スーツは回りを見まわした。そして、
「あ、ねえ、君。」
 アーフ・スーツは翔を見つけて声をかけた。思わず振り向いた翔はアーフと 目が有ってしまった。翔をアーフが見下ろしている。翔は、
「何でしょうか?」
 アーフは、
「ちょっとお姉さんたち困っているんだけど、手伝ってもらえないかしら?」
 翔は部活動で体を鍛えているうえに、空手道場にも通っていて腕力には 自信があったが、アーフは結構かわいい女の子にもかかわらず、 背が高いと言うだけでもかなり威圧感があるのに、胸も大きく、 それが翔の目前に押しつぶさんばかりに迫ってきた。翔は、
「い……いいですけど(^_^;)」
「じゃぁ、急ぎましょう。こっちへいらっしゃい。」
 アーフはそう言うと、無理やり翔の右手をつかみ、引っ張った。翔は、
「おい、ちょっと……。」
 その光景は、ずっと遠くから見ると、母親が小さい子供の手を引いて 連れて行くようだった。アーフは早足で翔の手をひいて歩いていく。 翔はなんとかついて行こうと必死で走っていた。
「えーい、まどろっこしい!」
 アーフはそう言うと、翔の片手を引っ張り上げた。翔はびっくりして、 思わず声をあげた。
「わっ!」
 翔の体は一瞬宙を舞った。彼はその時何が起こったか理解できなかった。 実はアーフは、翔を片腕の力だけでひょいと持ち上げ、おんぶしたのだった。 翔はアーフに背負われたまま、何もできずに目的地に連れて行かれることに なってしまったのだった。アーフは、
「心配しないで、すぐに着くから。」
 そう言って、アーフは先ほど翔が入ってきたドアを開けた。 ドアの先にはなぜかドアに面した通りではなく、見た事もない部屋につながっていた。

「こんな非常時にみんなどうしたのかしら?アーフはまだ帰らないし、
 この部屋には一人の若い女性がいた。彼女の名はルウィフ。 彼女はコンソールをにらみつけるように見つめたまま、頭を抱えていた。 そこに翔を背負ったアーフが入ってきた。
「あらルウィフ、どうしたの?」
「『どうしたの』じゃないわよー(-_-メ)こんなときに男の子とデートしてるわけ?」
 先ほどのルウィフの言葉にびっくりしたのは、翔のほうだった。 ルウィフはとてもかわいらしい女性で、スタイルもよかったのだが、 身長はアーフ以上に高かったのだ。縦に高いだけなら電信柱のような体型だが、 横にもバランスよくついてたので、とてもスタイルがよかった。 アーフは翔を背負ったままルウィフに向かって、
「て、言うかルウィフがこのドアを最寄の出張所につないでくれたんでしょ。 この子が手伝ってくれる事になったのよ。」
 もはや翔には選択肢は存在しなかった。

「一体、ここは……。」
 ラール・テッフは言った。あまりにも無計画な展開のため、 既に読者が忘れかけているであろう長女のラール・テッフ、 二女の ツォウズ・テッフからなるテッフ姉妹は、ここは何処なのか理解しかねていた。 回りを調べようにも足元が柔らかく、歩きづらい。 一方、目を覚ましたばかりのサオングは、自分の体の上に乗っている物を 確かめるため起きあがろうとした。
災難か!?巨大娘に 挟まれた (;´Д`)ハァハァ「きゃっ!」
 突然柔らかかった足元が固くなり、妹のツォウズはバランスを崩し、 姉のラールの上に倒れこんだ。

-ずどーん-

「今度はなんなんだ。」
 アーフに背負われたままの翔は、再び轟音と地震のような振動に襲われた。 更に悪い事にこのショックでアーフはバランスを崩した。
「危ない!」
 後に倒れそうになったアーフを、ルウィフが体で支える。
「むぎゅー(T_T)」
 アーフは倒れるのを免れたが、彼女に背負われていたままの翔は アーフの背中とルウィフの胸に挟まれてしまった。普通サイズの女性なら (;´Д`)ハァハァ状態だろうが、先ほど言ったとおり2人とも二メートルを かルーク超えている大女、前後からものすごい体重が掛かり、 思わず声にならない悲鳴を翔は上げたのだった。

-----------------(6)来てます!-----------------

「こんにちわ。データによるとツレー・ナインちゃんよね。」
 そこは先ほど、翔が迷いこんだ小さなオフィスで、女性スタッフが 一人いるだけだった例の場所である。声のしたほうを振り向きその主と その一行を確認した彼女、ツレー・ナインは、
「もしかして気持ちだけでも明るい21世紀の会の総合開発部チーフの ヘルプ博士ですか?」
「そうよ。ちょっと紹介したい人たちを連れてきたんだけど、 それどころじゃないみたいね。」
 このような事は日常茶飯事なのだろう。突然宇宙から2メートル超の娘の 集団が来ようが、ちっちゃなヘルプ博士が突然みちるとビッグバンという 「お供」を連れてやって来ようが、まったく動じないのだ。まずビッグバンは、
「一体何が起こったんだ?」
「わーい(^O^)、ヘルプちゃんここ何処?それからこの子達誰?かわいい〜 (ハート)」
 ビッグバンと共にやってきたというか、強制的に転送されたような物だが 全然気にもしていないみちるは、手のひらの上の小さな人間たちを見て 盆と正月と待ちつづけていたDVDソフトの発売日が一度に来たような すばらしい気分だった。そこにはクリニカとみちるは初めて見る クリニカより小さな人間たちだった。

「どうするのよ〜。この子伸びちゃったじゃない。」
 ルウィフは自分とアーフにはさまれて気絶してしまった翔を見ていった。 アーフは、
「そんな〜。私のせいじゃないでしょう。」
「サオングちゃんにお仕置きして貰わないとだめね。」
「私のせいじゃないって言ってるのに(`Д´)ヒドイ」
「怒らないでよ。冗談だったのに。」

-ずどーん-

 再び振動がアーフたちを襲った。そしてその主がアーフたちの前に 姿を現わすことになる。
「こんにちわぁー。ヘンコよ〜。」
 大きな声が町中に響き渡った。若い女性の声のようだった。 更にその声は続いた。
「ヘルプちゃん来てルー? ここで待ち合わせのはずなんだけど〜。」
「一体何が起こったの?」
 アーフは、気絶したままの翔を背負ったままみちるやツレーのいる 部屋に戻ってきた。
「待ちなさいよ。」
 次に戻ってきたのはルウィフだった。
「一体、何が起こっているの?」
 次に戻ってきたのはルウィフだった。
「ごめん、ちょっと変な奴に手間取ってね。」
 その次に部屋に入ってきたのは先ほどの2人よりさらに大きく、 筋肉質な女性だった。彼女こそ登場しながらしばらく出番の なかったサオングだった。彼女の両手はなぜか握られていた。 それを見たルウィフは、
「サオング、何やっているの?メンバー欠員で今三人しかいないのよ。」
 するとサオングは、
「仮眠を取っていたら、おなかの上あたりで何か動いていたのよ。 虫かと思っていたら……。」
 サオングは、握っていた両手を少し広げ、中のものを見せようとした。
「わーっ、すっごー、かっわーい、らぶりー(ハート)」
 サオングの手の中のものを見に来たのは、アーフでもルウィフでもなく、 その二人の間をすりぬけてチョー高速で飛ぶように走ってきたみちるだった。
「くく……く、る、し……きゃっ!」
 サオングの少し開いた指の間から、小さな顔が覗いた。テッフ姉妹の 姉のほう、ラールだった。
「姉さん、どうし……きゃっ!」
 同じように少し開いた反対側の指の間からまた小さな顔。妹の ツォウズである。みちるはその姉妹を目をきらきらさせながら見つめていた。
「欲しいの?良かったらあげるわ。」
「ありがd。」
 テッフ姉妹の意思などまったく関係無しに小さな2人はみちるに手渡された。
「良かった。これで問題解決ね。」
 河岸でみちるを見下ろしていたサオングは言った。
「あの〜、まだ重要な問題が残っていような気がするんですが……。」
 このオフィスのスタッフであるツレーが言った。
「ヘルプちゃん。いるんでしょ。」
 先ほどの声が外から聞こえてくる。その声の主は 近づいてきているのか、更に大きくなっていた。
「みちるちゃん。私を外まで連れていってくれる?」
 みちるは、テッフ姉妹を受け取るために、ヘルプ博士とクリニカ2人、 更に小さいノート博士たちを加え4人、そしてリャドたち5人を加えた 合計9人の小さな小人たちをそばの机の上においていた。みちるは、
「ヘルプちゃんをつれていくから、ここでお友達と仲良くしててね。」
 みちるはそう言ってテッフ姉妹の2人を先ほどの机の上に優しく降ろした。
「ちょっと待ってください。私が先に出て、安全を確認します。」
 しばらくというか、更新感覚の関係で恐らく読者たちからは スカーリ忘れ去られてしまったであろう宇宙刑事ビッグバンはみんなが 見守る中、一人で外へ出てていった。が、そのあとで戻ってきた。 それを見たサオングは、
「何か有ったの?外は……?」
「おい、おまえたちの船と出入り口をつなぎっぱなしだ。」
 戻ってきたビッグバンがそう言うとそのときを待っていたかのように、 ヘルプ博士は机の上にあった端末のキーボードの上に飛び乗り、 ダンスをするように操作をし始めた。
「そうそう、あなたたちも手伝ってよ。」
 ヘルプ博士はテッフ姉妹に話しかけた。姉のほうのラールは、
「なんで私たちがそんな事しないといけないのよ〜ヽ(`Д´)ノ」
 しかしその言葉も空しくみちるはテッフ姉妹の2人に両手を伸ばした。 もちろん二人は逃げようとしたがすぐに机の端に追い詰められてしまった。
「逃げちゃだめだよ。ちょっとヘルプちゃんにお手伝いするだけだから……。 ヘルプちゃん。連れてきたよ。」
 みちるはそう言ってテッフ姉妹の2人を今度はキーボードの上に 優しく降ろした。
「成り行き上、俺たちも手伝わないといけないのだろうか……。」
 リャドたちの仲間のボーブが言った。
「その必要はないわ。もう終ったから。」
 ヘルプ博士が言った。
「空間のつながりを戻したという事は、わたしたちの宇宙船にはどうやって戻るの?」
 ルウィフが言うとヘルプ博士が言った。
「それならご心配なく、別の場所につなぎなおしたから。」
「では博士、改めて安全の確認を。」
 ビッグバンは再び、先ほどの出入り口から外へ出ようとした。

-ぷよーん-

 ビッグバンは外に出ようとすると何かにはじき返されるように建物の中に戻ってきた。
「博士、外に出られないようです。」
「おかしいわねぇ。ちゃんと外に出られるはずなんだけど。」
 ビッグバンの問いに、ヘルプ博士が答える。するとツレーが、
「あのー、外に何か壁のような物があるみたいなんですけど。」
 確かに、ツレーの言う通り、何か淡いピンク色をした壁のような物が すぐ外に存在していた。更に壁と入口との間には、見なれた歩道のタイルが あることから、壁は後から出来た物らしいことが推測できた。
「柔らかい……なるほど、妙な壁だ。さっきはこれにはじき返されたのか。」
 ビッグバンは、目の前の壁をとんとんとたたいてみた。そして今度は、 力いっぱい押してみた。が、柔らかい壁は少し凹むだけで まったく動く気配は無い。
「もう一度やってみよう。もしかしたら動くかもしれない。」
 ビッグバンは、目の前の壁を再び力いっぱい押してみた。
「ぬぅぅぅぅー、うわーっ!!」
 まったく動かないと思われた壁が突然動き、ビッグバンは前によろけ、 何かにぶつかった。そしてその直後彼は何かに押さえつけられた。 更にその直後、彼の体はそのまま上へと持ち上げられる。
「何だ!!」
「すみませーん。 ヘルプ博士をご存知ですか?」
 耳を劈(つんざ)き、体中に響く声。その声の主は、 ビッグバンの目の前にいた。
「はじめまして。申し遅れましたが私、 ヘンコといいます。」
 ビッグバンの目の前に有る巨大な女性の顔、彼女こそ声の主、 ヘンコなのだ。自分を押さえつける力が無くなったのでビッグバンは あたりを見まわすと、彼女の巨大な手のひらの上に載せられていたのに 気がついたのだった。ビッグバンは、
「あ……私わぁーっ!!」

-ひゅーん-

 ビッグバンを手のひらの上に乗せていた巨大女性は突然消え、 ビッグバンは地上へ向かってまっさかさまに落下した。どうなる。 続きはエンディングのあと……な訳が無い…… などと余計な事を書くとまた某掲示板で「時間の無駄遣い」などと けなされるので止めておきたいと言いつつ、意味も無く余分な部分を 書きつづけることになってしまうから困った物である。

-----------------(7)誰ですか?-----------------

「それにしてもビッグバンと名乗る巨人が出て行って戻ってこない、 どうしたんだ……。」
 リャドはビッグバンが出ていった出口を見つめていたら 不意に後から誰から肩をたたかれた。
「あ、すみません。」
 後から聞こえる声は、先ほど外から聞こえてきた大きな声の主と 同じように思えた。しかし、その声はずっと小さく、 リャドのすぐ後ろから聞こえてきた。リャドが振り向くと、 見た事の無い女性が立っていた。サイズは、リャドたちと同じくらいだ。 なぜか彼女の外見はビックバンが出会った巨大女性とそっくりだった。 とは言うもののそんな事などここにいる面々は知るよしもない。
「あ、私は別に攻撃しようとかいじめようとか、ましては食べちゃおうとか 全然考えてませんから。もしかしたら驚かしちゃうかもしれないけど。」
 女性がそう言うとリャドは、
「充分今まで驚いているさ。」
「それなら大丈夫ですね。ヘルプ博士をご存知ですか? 身長は15.9m。女性、職業はかわいい天才科学者、 髪の毛はロングで色は淡いグリーン、スリーサイズは……。」
 みちるはリャドの後に突然現れた女性、つまりみちるにとっては 小さなこびとである彼女を目をきらきらさせながら見下ろしていた。
「もしかしてヘルプちゃんに会いに来たの?」
「そうよ。あなたはヘルプ博士をよく知っているみたいね。彼女の話を聞きたいわ。」
 女性はそう言うとぽんと手をたたいた。何ということでしょう。 ……って某リフォーム番組かいっ、などといっている間に女性の体はまるで 風船のように大きくなり始めた。それを見ていたみちるは、
「わーすごいー。」
 女性の大きさは、みちる達が見ているうちに、自分のそばにいるはずの ヘルプ博士やクリニカくらいの背丈になり、更に小さな子供くらいになった。 女性は机の上からぴょんと飛び降りた。彼女の大きさは更に大きくなり、 みちるよりやや高いくらいの背丈になった時点でとまった。
「あの−、珍しい特技を持っておられるようですが、どちら様でしょうか?」
 ツレーが女性に尋ねる。
「はい、先ほど参りましたヘンコと申します。ヘルプ博士については 少し前に外で男の方にもお聞きしたのですが……。」

-ひゅーん、ばりばり、ばっきーん-

 その直後何かが部屋の天井を突き破り、床にみごとな 人間の形の穴をあけた。穴の中を見た女性、すなわちヘンコは、
「先ほどこの方に尋ねようとしたのですが、ちょっと……。」
「ちょっとどころでは済まないような気が……(;゚Д゚)」
 同じように穴の中を覗きこんだツレーが言う。つづいてみちるが そこを覗きこむ。みちるの右手にはいつのまにかヘルプ博士が ちょこんと乗っていた。ヘルプ博士は、
「ビッグバンだわ、どうしたのかしら?」
「あの〜、先ほど天井を突き破って……。」 
 ツレーが言うとヘンコは、
「この程度なら、すぐ治りますわ。」
 そう言って二個のボールを針金でつなげたような道具を取り出した。
「この丸いのを持って貰えますか?」
 ヘンコはそう言ってボールの片方をみちるに持たせた。そしても一方の ボールを手にもったヘンコは、
 ハッコレヘッコレチョロインポンペ ゲッテノコウセンandソウレノベルッカリョッテコメランチョンの運否♪
 訳のわからない呪文をヘンコが唱えた直後、 先ほどあいた穴からビッグバンが這い出してきたというより 飛び出したという感じで回りのみんなの前に姿を現したのである。が、当の本人には何が起こったか よくわかっていないようだ。ビッグバンは周りを見回し、
「いったい何が……。」
「さっき落ちたのをこの人が助けてくれたんだよ。ね、ヘルプちゃん。」
 みちるの言葉を聞いたヘンコは、
「あの、ヘルプ博士というのはあなたの手のひらに乗っている方ですか?」
「そうだよ。」
「あら(^_^;)私'm'と'cm'を勘違いしてましたわ。」
 ヘンコとみちるの会話を聞いていたツレーは、
「普通間違えないと思いますが……。」
 するとビッグバンが、
「そうだ、そんな事より∩(゚∀゚)/─( ゚∀゚ )―\(゚∀゚)∩ 1行さいたま〜……じゃなくて外は危険だ、巨人が居た。」
 その言葉を聞いたヘンコは待ってましたといわんばかりに再び手をぽんとたたいた。 彼女は再び大きくなりはじめ、その身長はたちまちアーフ達を超え、 天井に届きそうになった。だがまだそれは止まらず、天井を突き破ってしまった。

-ばりばり、はっきーん-

「もしかしてその巨人は、こんな姿をしていませんでしたか?」
 更に拡張された天井の穴の遥か上から、巨大なヘンコの顔が覗いていた。

 18年ぶりの優勝を日を待つばかりとなった絶好調のタイガースの 快進撃が続く2003年7月某日、彼女は買ったばかりの雑誌を握り締め、 性懲りも無く親しい友人のところへ向かうためLRT(カコ(・∀・)イイ路面電車)へ 乗りこんだ。この街のLRTはすっごいコンピュータ技術を使用して無人運転で、 ダイヤ通り一秒は狂うかもしれないが、二秒以上はまず狂わない正確さで 運転されていた。車内に取り付けられた液晶モニターには、 「巨大娘の夕べ、 好評により七月三十一日まで上映延長」 の広告表示が流れていたが、次の駅が近づくと 「次は神目護和魔導師協会ケセネー会館」 と、やたら長い駅名が表示された。
この街の 友達会いに 行くんだよ LRTは道路上の本線から高架の専用線になっている支線へと入った。 その先は一つの石造りの建物の中へと続いていた。その隣にはミラーガラスに 覆われた大きなビル。更にその向かいには日干し煉瓦造りの 小さな店が並んでいた。
 建物のなかに作られたホームに音も無くLRTは滑り込み、 そこから彼女は降りてきた。彼女こそ先ほどまで登場していたみちるだった。 みちるを迎えたのは協会メンバーでもあるルフマモという女性だった。 ルフマモは、
「みちるちゃん、よく来たわね。」
「あのヘンコちゃんが載っている雑誌、途中で寄った書店で売っていたから 買ってきたよ。」
「そうそう、そのヘンコちゃんの話を聞かせて欲しいのよ〜。」

 十分くらいあと、2人は会館内の喫茶店に居た。
「ヘンコちゃんが巨大化したらちっちゃなヘルプちゃんたちはどうなったの?」
「『そんな事もあろうかと超便利バリヤーを準備していたのよ〜』 といってヘルプちゃんが取りだしたアイテムで助かったの。」
「それはそうとして、よくあれだけのメンバーが一箇所に集まった物ね。」
「ヘンコちゃんも、ヘルプちゃんくらいすごいんだよ。ヘルプちゃんが いろんなサイズの友達が居るってメール交換で知っていたから、 もっと増やせるように『確率操作プログラム』とかいうものであそこに 集まるようにしたんだって。」
「『類は友を呼ぶ』と、言うか予想もつかないような行動を簡単に 取っちゃうタイプの二人がそろうと、凄い事になるかもしれないわね。」
 そのとき、店内にアナウンスが響いた。
「ルフマモ・ウッメさん、潮乃木 みちるさん、お連れ様のヘルプ博士とヘンコ様がお呼びです。」
 それを聞いたルフマモは、
「もしかして、来てるの……(^_^;)」
「うん、来る途中の書店で二人に会ったの。あ、ヘルプちゃんとヘンコちゃん、来たわよ。」
「こんにちわ〜、新しいお友達連れてきたわよ。」

はぜっくぅーNo144room