虹梁

海老虹梁
(えびこうりょう)

木鼻

朝光寺向拝と本堂

播磨古寺巡礼奥の院2
寺院建築様式について

 わが国の仏教建築は538年の仏教伝来と共に大陸からの様式を受け継いだものである。

 ただ飛鳥時代以前の古墳時代に大陸の様式以外の木造建築が無かったのかと言うとそうでもなく、出雲大社の高層木造神社建築などはその良い例である。

 後にこの飛鳥以来の大陸から受け継いだ仏教建築様式に改良を重ね、わが国独自の建築様式にしたものが「和様」と呼ばれる建築様式になっていった。

以下日本の寺社建築の様式を簡単に綴ってみた。
 

和 様
 飛鳥時代から続く建築様式、和様と言っても仏教伝来当初の建築は大陸からの様式を受け継いだもので、後の平安後期の時代には国風文化の影響を受けて日本独自の様式に変化していった。
 特にこの時代は内部装飾に変化があり、土間から板張りに、引違戸、縁側、細い柱や柱補強のための長押、低い天井などが特徴である。


大仏様(天竺様)
  鎌倉初期に重源(ちょうげん)が東大寺再建あたって採用した宋の建築様式。
 当時福建省あたりの建築様式に通ずるものがあり簡素で合理的、豪放さが特色である。
 大仏殿には最適だが穏やかさを好む和様とは合い入れずその後衰退していった。
 貫と呼ばれる水平材を用い強固な構造で、貫の先端の繰り型や挿肘木が特徴。
 現存する日本の大仏様建築は奈良東大寺の南大門と播州の浄土寺浄土堂だけである。
 
禅宗様(唐様)
 鎌倉中期以降に宋から伝えられた禅宗寺院の建築に採用された建築様式。
 大陸からの禅僧の往来と共に伝わった様式で勾配の急な屋根、繊細で簡素、貫があり天井は張らず、花頭窓、扇垂木、柱の下に楚盤をおくなどの特徴がある。

折衷様(新和様)
 和様様式に大陸から伝えられた大仏様、禅宗様の細部を取り入れたもの。
構造的にもそれぞれの長所をバランスよく取り入れ
現在の寺院建築の基本となる様式である。
室町から江戸期にいたっては両者の明確な区別が出来ないほどに変化していった。

細部の建築様式について

      基礎について

 基礎は建物の土台になる部分で壇上積(だんじょうづみ)と呼ばれる切り出した成形石を積んだ壇上積から、礎石(そせき)を置いただけのものまでの数種類がある。

石垣積の基礎

亀腹の基礎

礎石の基礎

葛石

縁板

縁束

亀腹(かめばら)

礎石

 亀腹は建物を湿気から防ぐためのもの、漆喰で塗り固めた低い壇である。
 亀腹は時代がさかのぼるにしたがってだんだん高く大きくなっていく。
 こちらは初期の例。

      柱について

 柱には円柱、四角柱、多角柱に大別される。
飛鳥奈良時代にはギリシャ様式に影響された中央部が少し膨らんだエンタシスと呼ばれる柱が多い。

 鎌倉時代には柱の上下がすぼんだ(ちまき)様式もでてくる。

 大仏様では上部のみにのある柱もある。


 飛鳥時代からの柱は円柱が主であったが、平安時代頃からは四角柱が出てきた。
 初期の頃は先代からの名残で面取りが多くなされていたが、時代とともに面取りも少なくなってくる。

 四角柱はどちらかと言えば小型の建物に多い。

上部にのみ粽のある柱

(朝光寺本堂)

(朝光寺多宝塔)

(酒見寺御影堂)

大仏様の柱   (浄土寺浄土堂)

(寺院の建築様式とその細部)

   基礎、柱、屋根などについて

 壇上積石垣積など石造りの基礎のことを基壇(きだん)という。

 こちらは国宝であるが基礎は礎石だけのシンプルなもの。

四角形の柱 (太山寺中門)

        長押と貫について

 飛鳥時代以来の建築物は柱と柱をつなぎとめるのに長押(なげし)と呼ばれる横木を使っていた。
 柱を挟み込むようにしてつなぎ止める工法である。
 しかし鎌倉時代になって大陸から大仏様がはいってくると(ぬき)と呼ばれる、柱の中に横木を通してしまう工法が入ってきた。

長押 (鶴林寺太子堂)

貫 (浄土寺浄土堂)

長押

横木が柱を挟み込んでいる。

横木が柱を貫通している。

      梁と木鼻について

 (はり)とは柱と柱をつなぐ水平材。
一般的には建物の奥行き方向をつなぐことが多い。
 端部が柱柱にかかっているものを「大梁」、かからないものを「小梁」といい、アーチ型の反りを持たせ意匠的なものを「虹梁」(こうりょう)という。
 時代とともに反りが少なくなり江戸時代には直線的になる。







 本堂と向拝(こうはい)に段差がある場合、虹梁は海老の背のように湾曲した梁になる、
 このような虹梁を「海老虹梁」という。

 また奥行き方向の梁に対して横方向の水平材は桁(けた)という。


 木鼻(きばな)は貫や梁などが柱の外に突き出した部分をいい鎌倉初期頃には彫刻の施された木鼻が伝わった。
 その後各時代や宗派によってさまざまな木鼻があらわれてくる。

朝光寺本堂内

鶴林寺本堂

朝光寺本堂の向拝

向拝

        向拝について

 左の写真を見て見てみると、本堂正面の中央の部分の屋根がつきだしている。
 このように拝礼場所の飛び出た部分を向拝という。

       屋根について

 日本建築の大きな特徴の一つに軒(のき)の深さがある。
 屋根の庇(ひさし)が長いのである。
 これは雨の多い日本の気候の中で建物を守る為なのだが、同時に日本建築の特徴の一つでもあり美しさの重要な要素にもなっている。


 寺院建築の屋根は大きく分けて4つに大別される。
寄棟造り(よせむね)、入母屋造り(いりもや)、切妻造り(きりづま)、宝形造り(ほうぎょう)である。


 寄棟造りは四方の屋根が大棟(だいとう)という水平材に向かって造られている。
 正面から見ると屋根の形が台形に見え、横から見ると三角形に見える。

 切妻造りは大棟の終端からま下にやねを切り取ったような形。
 正面から見ると屋根は長方形に見える。

 入母屋造りは寄棟と切妻を合わせたような造り。
時代が上がるにしたがって格式の高い建て方になっていった。

 宝形造りは屋根が大棟のかわりに宝珠にむかって造られている。
 何処から見ても屋根が三角形をしている。

 

朝光寺本堂

寄棟造り

鶴林寺本堂

入母屋造り 横側

入母屋造り 正面

太山寺鐘楼 切妻造り

鶴林寺太子堂 宝形造り

大棟

宝珠

棟木

浄土寺拝殿

 寄棟造りを下から見たところ大棟の下には棟木がある。
建物にとって重要な部分で、家を建てるときに行う「上棟式」は棟木を取り付ける際の儀式である。
 棟木がいかにに重要な部分かがわかる。

播磨古寺巡礼奥の院3
播磨古寺巡礼奥の院

(寺院内の建物と伽藍配置)

(寺院の建築様式とその細部)
       組物、扉、窓、相輪