"Word is most important,but chemistry
between the ensembles,
that
is the(show's success's) big key. "
Jimmy Smits, a.k.a Det.Bobby Simone
'NYPD Blue' in Larry King Live '96
1、アメリカTVシリーズについての基礎知識
まず最初に、日本ではなぜTVシリーズはマイナーだと勘違いされているのか、ということについて考えてみたい。
映画はBIG SCREEN、テレビはSMALL SCREEN と呼ばれるのは、単なるサイズのことなのだが、映画館の大画面の迫力に較べて、テレビは迫力がない→居間やキッチンなどのいつも同じセットのシーン→制作費がかかっていない=安っぽい、という単純な誤解パターンが出来あがるらしい。 また地上波では、深夜、またはローカル局の週末の日中とかの放送が多いこと、映画やテレビ情報誌などに解説が載っていない、映画とは違う俳優が多く出演しているとか、テレビの主役が映画に出ても端役かB級映画が多く、日本の映画解説では、ひょっとしてTVシリーズの出演作なんて、俳優としてのキャリアにカウントされないのでは?とまで考えるほど、ほとんど言及されることがない。そこへ日本のテレビと同じレベル?という思い込みが加わると、もはやマイナー以外の何物にも思えず、心無い映画ファンによるいぢめにも反撃できずに、ひとりで悩んでいるTVシリーズファンも少なくない反面、映画、テレビという違う分野のソフトなのに、なんで映画よりも劣るなどと言われるのかと、義憤に耐えかねているファンも多い。
これは様々な誤解が重なったまま、肝心な説明がおざなりにされてきたせいなのである。
実際は、映画は大画面で特殊効果、音響効果などを効かせた映像美を、雰囲気で見るというところがなきにしもあらずだが、TVシリーズは毎週連続して放送されるために、キャラクター設定をはじめとするドラマの基礎がしっかりしていないと、後々のストーリーがうまく展開していかない。それに画面の迫力ではなく、かみ合った意味のある会話で話を進め、連続性を生かして、地に足のついた現実的で複雑なストーリーを1シーズン約22回を通してじっくり描くことで、映画よりも深く現実感のあるドラマを作り上げてきたのだ。 またシチュエーション・コメディー(シトコム)は、家庭や仕事場などの決まったシチュエーションで起こる喜劇で、舞台劇のようなもの。セットよりも、セリフや会話を楽しむため、脚本にかなりのお金と時間をかけて作られているのである。
お金といえばハリウッドのマネーメイキングのランク付けでも、例えば80年代の「コスビー・ショー」全盛の頃のビル・コスビーは、同じく全盛期のマイケル・ジャクソンを抜いてのトップだったし、90年代の「サインフェルド」全盛期のジェリー・サインフェルドも、あのスティーブン・スピルバーグの上を行く稼ぎでトップを誇っていたということ。2年前の「サインフェルド」最終回が、かなりの視聴率になりそうな盛り上がりになったのに合わせて、CM料もスーパーボールなみに跳ね上がったこと、また「ER」や「NYPDブルー」などは、1エピソードでけっこうかなりな額の制作費、ということからみても、安っぽいという発想からして、まったくの誤解のたまものであると言えるのではないか。
また、ハリウッド映画ファンにとっては、無名俳優ばかりが出演していると見えるようだが、TVシリーズの世界も、アカデミー賞にあたるエミー賞他の賞できちんと評価されている有名やり手製作者たちや、スターたちが存在するのである。そのうえ、以前デイヴ・スペクター氏がどこかで書いておられたが、TVシリーズでは、例えば映画でトム・クルーズが刑事や弁護士を演じるのを見るのではなく、現実的なストーリーが主役であるため、登場人物たちは、視聴者には、より本物の医師や刑事、弁護士らしく見える俳優が求められているので、演技力はあるが顔の知られていない舞台俳優を使う傾向にある、という。
キャラクター、ストーリー重視とはそういうことなのである。
で、もちろんTVシリーズに出演していた俳優たちが映画に出演すると、アメリカの映画批評には、例えば「ノーザン・エクスポージャー」のD・J”クリス・イン・ザ・モーニング”のジョン・コルベットが出演しているけど、ヒゲだらけで金髪にしてるから〜、なんて書いてあったり、宣伝のためにテレビ出演したときのインタビューでも、何十年も前のTVシリーズ時代の話も聞かれるのは当然のことなのである(FOX & FRIENDSのGeorge Brett’s Hall Of Fameを参照してね)
それになぜかあまり知られていないが、昔からハリウッドでは映画だけでなくTVシリーズも世界中に売れるように、国際的に通用するような価値観を考慮して製作しているということ。80年代に日本企業がハリウッドの映画会社を買収したときのアメリカのニュースでは、その映画会社の所有する主な映画のソフトと共に、主なTVシリーズのソフトも紹介していたし、実際アメリカのTVシリーズは、映画と同じくらいポピュラーなものとして、昔からずっと世界中で放送されているのである。
2、アメリカTVシリーズを正しく理解するには
さて誤解が解けた後は、整理整頓に取りかかりましょう。
日本では、外国テレビドラマシリーズだったり、外国ドラマ、海外テレビ映画など、呼び方が一定でないのだが、プライムタイム・エミー賞では、シリアスなドラマDRAMA SERIESと、COMEDY SERIESに部門が分かれている。日本でのいわゆるテレビドラマシリーズは、ドラマシリーズとシチュエーションコメディーSITCOMを一緒にして、TV SERIESと呼ばれているのである。
ということで、まず最初に、9月〜5月まで約22回を1シーズンのTV SERIES、2月、5月、11月などのSWEEP月間に2〜5話集中して放送されるMINI SERIES、TV MOVIE(TVM)と、分類整理するべきではないだろうか。
このへんで「外ドラ」「海ドラ」などという、簡単だが混乱するだけの呼び方を一掃し、外国TVシリーズまたは海外TVシリーズという呼び方を定着させ、ミニシリーズ、TVM、シトコムというカテゴリーを確立し、ドラマシリーズも、シリアスもの、ソープオペラ、それにファミリーものなどに分類し、シトコムも、ファミリー子ども向けのもの、大人向けのものと、それぞれの分野ごとに解説し、紹介されるべきではないだろうか。
A、これは3大ネットワークで放送される主なもので、ケーブルテレビ製作やMidseason replacementなど、必ずしも9月開始、5月終了とは限らず、従って1シーズン放送本数が22回前後ではないものもある。
B、アメリカでの視聴率調査月間で、レギュラー番組には豪華ゲスト出演、話題のミニ・シリーズで盛り上がる。
3、アンサンブルドラマシリーズとは?
例えば「刑事コジャック」、タイトルロールの主人公、コジャックを中心に、クロッカー刑事やスタブロス刑事などのキャストは、彼のために存在するかのように働き、ストーリーも1時間で1話が進行し時間内に解決、ほとんど後を引かないというのが従来のTVシリーズだったが、81年に放送開始された「Hill Street Blues」は、レギュラー、セミレギュラーを合わせて10数人のアンサンブル・キャストを組み、まるで現実の警察分署のような生々しい事件を縦糸にレギュラーたちの人間関係などを横糸に、という感じで立体的なストーリーになっていて、1エピソードに3,4話(1話はユーモア混じりの息抜き)のストーリーが同時進行して語られ、しかも1話完結でなく、シリーズが継続している間どのストーリーも生きていて、何年後かに後日談が登場したりする、シリーズものの特徴を最大限に生かした手法で、テレビ初のアンサンブルドラマシリーズとして有名である。
製作者のスティーブン・ボチコーは、この作品でエミー賞作品賞他多数受賞、その後弁護士事務所が舞台の「LA LAW」、ニューヨーク警察の「NYPDブルー」などのアンサンブルドラマシリーズを製作し、成功させている。
「ヒルストリートブルース」「LA LAW」だけでなく、日本で放送されたものだけを見ても、その後「ピケットフェンス」「ノーザンエクスポージャー」「シカゴホープ」「LAW & ORDER」ER」「ホミサイド」「ザ・プラクティス」など、アンサンブル・キャストによるアンサンブルドラマシリーズが、80年代以降のエミー賞作品賞を争ってきたアメリカTVシリーズの中心的存在であることがわかる。
また俳優組合が主宰するSAG賞には、シリーズの共演者全員を対象にした「アンサンブル」賞が設けられているほどで、「アリー・マクビール」は、本来、アリーが中心のシリーズなのだが、個性的な共演者たちはアンサンブルキャスト賞を受賞している。これは、冒頭のジミー・スミッツの言葉どおり、シリーズ成功の秘訣はアンサンブル・キャストにあり、主役俳優のカリスマ性だけに頼るのではなくレギュラー全員のキャラクター設定が、画面の隅から隅まで見逃せないような気持ちにさせ、何度見てもおもしろい奥行きの深いストーリーを作るために重要視されているということではないだろうか。
4、シリーズ分類
青春ものとアクションとか、SFものとアクションなど、分類しにくいものもあるのだが、取りあえずエミー賞の候補になるようなシリアスなものとソープオペラ、シトコムも大人向きと18歳以下の子ども向きのものを一緒にしない、というのを大前提に考えて分類してみた。TVMは、色々なものが製作されているのだが、最近、終了したTVシリーズのリユニオン、リターンものを、Sweep用のTVMとして復活することが多いのは、特筆すべきことだと思う。(分類表へ)
-
-
-
-
HOME
|