課題研究の取り組み

兵庫県立飾磨工業高等学校
電気工学科 吉田 健太郎

1.はじめに

社会人講師として中村隆弘氏(光テクノ株式会社)を招き、生徒からも意見を聞き、テーマを決めることからスタートした。その結果、「電気をつくろう」というテーマに決まった。生徒は電気工学科であり、電気に関する座学や実習には取り組み、発電原理についても理論的には勉強しているが、発電装置を実際に製作したことはない。よって、生徒が強く興味を持っていたこともあり、本テーマとした。また、大型発電機のメーカへ見学に行き、物作りの現場を見学することでさらに発電機について理解を深めた。


          図1

2.研究の目的

自動車の発電機であるオルタネータを用いた発電装置の製作を通して、物作りに取り組むこと。発電方法としては、自転車発電と水車発電の2種類を行う。また、発電機や電動機を分解し実物に触れ、関連知識も深めることを目的とする。

3.発電機について

発電機は、電磁誘導を利用して、機械的エネルギーから電気エネルギーを得る装置で総称としてジェネレータと呼ばれているが、一般的には自動車用が多く、ダイナモと呼ばれていた直流整流子発電機から進化し、交流同期電動機をベースにしたオルタネータが主流になっている。

4.1 年間の流れ

  4月  テーマ決め、資料集め
   5月  発電機、電動機の勉強
   6月  発電機、電動機の分解及び構造研究
   7月  発電機の改造
   8月  設計、材料購入、水車製作
   9月  水車の改良
  10月  自転車発電装置の製作
  11月  自転車発電装置の試験運転、水車発電装置の製作
  12月  工場見学、水車発電装置の試験運転、発表準備
   1月  学科別課題研究発表会
   2月  5科合同課題研究発表会

5.オルタネータの原理

原理としては、電磁誘導である。オルタネータは、ステータ(固定子)の中でロータ(回転子)を回転させて発電している。ロータには、図4に示すように電磁石の原理を用いている。


図2

電磁誘導・・・コイルの付近で、磁石を動かすと、コイルには電圧が発生する。


          図3

電磁石・・・・コイルに電流を流すと、磁石と同じような働きをする。


          図4

6.製作
(1)オルタネータの改造

オルタネータを分解し、レギュレーターなどの部品を取り外し、ステータコイルの出力部とロータコイルの電圧を加えるブラシに電線を取付け、外部から直接制御できるようにした。そして、ロータの回転軸にはプーリを取り付けた。


            図5
        
(2)自転車発電装置

自転車の後輪に付いたスタンドを取り外し、発電機を固定した板にL字アングルを使い、その板をねじで自転車に固定した。

(3)水車発電装置

ア.水車と土台作り
始めに、水車の大きさと形を決めた。次に、材料を購入し、のこぎりと電動ドリルを使って木材を加工した。接合には、木工用ボンドとネジを用いた。プロペラの羽の面積が小さく、水車を回転させることが出来なかったので、水受けを作る為に板を増やした。市販されている組み立て用の棚の柱と板を購入し、水車を固定する土台を製作した。土台の強度を強くする為と、発電機に水がかかるのを防ぐ為にベニヤ板を使った。軸には、ステンレス製の棒を使い、その棒に穴を開け水車をネジで固定した。
イ.プーリ
水車のプーリは発電機の回転数を上げる為に、大きなプーリを使う必要があり、自転車の車輪を改造して使用した。

図6                  図7

7.回路図

発電した交流電流を整流器により直流に変換した。ロータコイルに電流を流す為、自動車用のバッテリーを接続した。自動車と同様、発電が始まれば発電した電流をロータコイルに流すように配線した。電圧を平滑にする目的で、コンデンサを二つ使用した。


図8

8.実験結果

 出力電圧     最大 11 V
 出力電流     最大 10 A
 発生電力     最大 100W
 発電機回転数   1200min-1


図9

9.工場見学

社会人講師の紹介で、大手発電機メーカの西芝電機株式会社(姫路市網干区)に工場見学を行った。工場見学では、制御盤の組み立てや、発電機の製造現場を見学し、様々な発電機を見ることができた。生徒は発電機の大きさに驚き、発電機がどのようにして加工、組み立てしているかを直接見学することで、実際が理解できたようである。また、鉄屑を再利用するなど環境に配慮している点に関心を寄せていた。工業見学後の質疑応答では生徒の質問にも丁寧に回答していただいた。会社の様子やエンジニアという仕事のことについても知ることができ、とても勉強になったようである。
















図10                    図11

10.生徒の感想

尾崎哲也
この課題研究で色々な事を学びました。特に思ったことは、物を作る難しさです。普段、僕達は電気工学科なのであまり物作りには関係がありませんでした。だから、色々な問題にぶつかりました。しかし、班員と協力して試行錯誤を繰り返して乗り越えることができました。これによって、協力すれば乗り越えられるという事を学びました。工場見学で西芝電機株式会社へ行った時に、制御盤を作っており海上用と陸上用に分けられており海上用は頑丈に作られていると知ってびっくりしました。電気を作ることは簡単なことだと思っていたけど、実際やってみるととても難しく大変でした。発電出来た時はとても嬉しかったです。

山本純平
この1年間、課題研究の授業を通して社会人講師である中村先生に色々な事を教わりました。普段は、机の上で教科書を通してしか知らなかったことも実際に機器を見たり触ったりといったことができました。この事を通して、実際に物を作るのは大変だという事とある程度の経験、知識といったものが必要だということが分かりました。また、水車の製作の時やオルタネータの改良をするときには、中村先生に助言をしてもらい、形にすることが出来ました。この課題研究で行ったことは、今後、社会に出てもきっと応用を利かせて使えるといったことが出来ると思います。なので、この教わってきたことをしっかりと活用できるように自分のものにしておきたいと思います。

笠木圭介
課題研究「電気をつくろう」の授業を通して色々な事を学びました。社会人講師として指導してくださった中村先生には、水車の製作、発電機の仕組み、工場見学など普段体験できない事を教わり、電気について深く知れたと思います。また、物作りの難しさ、何かを作る大変さが分かりました。この授業で得た技術と知識を社会に出たときに何処かで生かせたらと思います。

平石勝昭
この課題研究を選んだ理由は、物を作ることが好きだったのでこの課題研究を選びました。何を作るかみんなで話し合って発電機を作る事になりました。そして、水車で発電させる事にしました。水車を作るのは時間がかかり夏休みも学校に来て水車を作りました。たくさん失敗しましたが、よい水車が出来たと思います。講師の中村先生の提案で工場見学に行きました。工場見学に行って色々な発電機が見ることができ、よかったです。この課題研究は楽しかったです。

井澤伸悟
この課題研究では、色々な事を学びました。私達は普段たくさんの電気を使っているのだから少しの電気なら簡単に作れると思っていました。水車と発電機をつなげば発電できると思っていました。しかし、水車の大きさや重さなどを計算して作らなければ水の力では回らないことに気付かされました。でもこの事は失敗しなければ気付かなかったと思うので今回のことを生かし、次に何かを作るときに役立てたいです。工場見学などにも行け、とても充実した1年で良かったです。

11.まとめ

テーマが決まった時、どのように発電するかについて話し合った。発電機の勉強にもなるということで発電機を選択した。小型モーターなどの比較的小さいものは分解したことがあっても、自動車のような大きな発電機を分解でき、生徒達は勉強になったと考える。自転車発電装置の製作を通して、実際に自分達でペダルを漕ぎ重さを実感でき、電気を作る大変さが分かったようである。また、水車発電装置では、水車を作成後、試作試験を行ったが、予測したように機能しなかったので水受けを増やすなど改良した。次に、軸に水車を固定する際、プーリについては大きさ、位置決めや軸を通す穴の加工精度、ベルト選びなど工夫を要した。失敗したときは、生徒同士で考え、何度も悩み、物作りの難しさ、楽しさがよく分かったようである。また、工場見学に行き、物作りを肌で体験し、実際の発電機の勉強になった。同時に、大勢の人が協力して物作りが行われていることを理解できた。

中村先生のご指導のもと、本課題研究を通して授業では体験できない、自分達で考え、物を作るということができた。