姫路より篠山へ抜ける国道372号線で30分ほど、酒蔵富久錦のある三口西交差点からは一乗寺まで一本道。 だんだんと寂しさが漂うような雰囲気が水子供養の盛んなお寺でもある一乗寺の雰囲気をかもし出している。 駐車場に車を止めるとすぐ前は隣聖院というお堂と水掛地蔵や水子供養壇などがある。 一乗寺の塔頭(子院)かと思いきや一乗寺とは関係ありませんという掲示板があったりして関係はよく分からない。 とにかく一乗寺の受付まで歩いていく。 正面には一乗寺名石と石造りの塔婆があり受付を済ませて階段を上っていく。 |
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階段は三段に分かれていて一段目を上りきると常行堂にたどり着く。 写真に見えるのは仮納経所で、本来納経を行ってきた本堂は現在修理中である。 常行堂の建立は奈良時代、信心深く東大寺建立でも知られる聖武天皇の勅願(天皇自らが願いごとを行うこと)により建てられた。 室町中期、赤松満祐(みつすけ)の将軍暗殺による嘉吉(かきつ)の乱1441年で焼失、室町後期の1533年再建したが再焼失、明治元年1868年現在の姿で再建された。 本尊は阿弥陀如来、不断念仏の道場であるが止観(座禅)道場としても使用する修行の場である。 |
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国宝の三重塔 |
常行堂より二段目の階段を上上りきると国宝三重塔が現れてくる。 木造の良さが前面に出てなんとも味のある塔である。 現在はこれ以上階段を上れないが、三段目の階段を上りきると三重塔が上から眺められる。 建立は平安後期の1171年 長吏法印隆西、一和尚仁西の勧進(寺の建立のため金品を募ること)により造立。 仁西はこの頃寂れていた有馬温泉中興の僧としても有名である。 その後、仁増の勧進、額田部武末の瓦寄進により3年後の1174年完成した。 屋根は上に行くほど小さくなりその技法により安定感ある形で、藤原様式の秀作とされ古塔としては6番目に古い塔とされている。 16〜18年解体修理。 |
現在は修理中であるが金堂の歴史は、創建は650年とされている。 その頃は現在よりも北にある古法華のあたりに位置していたと考えられ、三重塔が創建された1171年頃までには金堂も含めた伽藍配置が整備されたと考えられる。 その後鎌倉後期の1312〜16年に工事が始まり1135年に完成するも室町後期の1523年に山名氏の兵火にかかり焼失。 桶狭間2年後の1562年赤松義祐が諸堂を再興するも豊臣氏滅亡の2年後、1617年に鬼追式の夜、失火により3代目も焼失。 江戸初期の1628年姫路藩主本多忠政公発願により4度目の再興、現在に至る。 金堂と同じく背後に建てられた重文の護法堂、妙見堂、弁天堂も現在は見ることができない。 |
敷地内いたる所にお地蔵様が安置されている |
開基の法堂仙人を祀る開山堂 |
三重塔の正面 上ってきた階段の右側に下り階段があり奥の院へと続いている。 奥の院に至る通路は開かれた通路であるが大木がうっそうとした谷間で薄暗い感じがする。 そしてしばらくして小さな階段を上がると開山堂にたどり着く。 開基の法堂仙人を祀っているらしいが中は閉ざされて見ることができない。 宝物館には鎌倉時代作で重文の法堂仙人木像が安置されているらしいが宝物館も拝観はできなかった。 |
開山堂の左を登っていくと山の中へと入っていく。 賽の河原である。 染み出した水がわずかに流れ大小の石がある岩場の中を歩いていくと、いたるところに童子供養の無数の小石が積み上げられ、また同じく供養の風車やおもちゃが供えられれている。 そんな光景は子や水子をなくした親の悲しみが、この寂しい世界の中に凝縮されているようだ。 積まれた石を崩さぬようにゆっくりと大きな岩場に進んでいったが、正面にある小さな地蔵菩薩の祀られている岩場の祠は、子をなくした親たちがすすり泣く声が聞こえてきそうで子供たちの冥福を祈らなくてはすまない気持ちで一杯になる。 私は今五体満足で生活しているが「悲しみの中生きているたくさんの人々のためにもせめて手を合わせるだけのことはさせていただきたい」との気持ちを込めて賽の河原を後にした。 |
地の果てのような雰囲気 賽の河原 |
賽の河原を下って出口にと近づいてきた頃、右手に小さな池が現れてきた。 小さな祠と数々のお地蔵たち。 小さな子供たちの冥福を祈りつつ一乗寺を後にした。 |
建造物
国宝 三重塔
重文 金堂
(種別神社として)
重文 護法堂
重文 妙見堂
重文 弁天堂
(種別近代以前その他として)
重文 五輪塔
絵画
国宝 聖徳太子及び天台高僧画像 10幅
(東京国立、奈良国立博物館、大阪市立美術館出品)
重文 阿弥陀如来五尊画像
(奈良国立博物館出品)
重文 五大力吼画像
彫刻
重文 聖観世音菩薩像(銅像)
(宝物館安置)
重文 法道仙人木造(木造)
(宝物館安置)
重文 僧型坐像
(宝物館安置)
法華山一乗寺巡礼
※定例宝物拝観日 4月14日、11月5日