労務管理について。

 労務管理とは、「労働力を効率的に活用する」ことと「労使関係を良好に維持すること」の二つを実現させていくことで人に関する管理のすべてを包括したものです。人事管理もありますが、労務管理とは内容を異にしますが、一般的な認識としては、人事管理も労務管理に含まれると認識されているようです。これは、人事管理と労務管理を明確に理解されていないためとは思いますが、……。


 労務管理に関係する法律等。

 労務管理に関係する法律はたくさんあり、通知、通達等を含むと事業主にとっては、非常に認識しにくく、理解しがたいものとなっています。しかし、「知らなかった…」ではすまないのが法律で、違反していると「処分」を受けることもあります。
 主な法律をあげますと
労働基準法、労働組合法、労働関係調整法、最低賃金法、労働者災害補償保険法、労働安全衛生法、パートタイム労働法、育児・介護休業法、男女雇用機会均等法、職業安定法、障害者雇用促進法、高齢者雇用安定法、労働者派遣法、雇用保険法…等
 どうでしょう、これらの法律が理解され、遵守されていると自信を持って答えられる方がどのくらいおられるでしょうか?


 労働基準法の一部紹介。

 労務管理に関する法律については順次更新、強化していきたいと思いますが、とりあえず「就業規則」について簡単に触れたいと思います。
 就業規則は、労働条件を明示、保障すると共に職場の秩序を維持する機能があり、職場の「憲法」と言えるもので、記載する事項は法定されています。
 従業員数10名以上の事業所(場所単位)は、就業規則を作成し、労働基準監督所長への届出が義務付けられていますが、10名未満でも作成しておく必要があるでしょう。
 就業規則は、適法性、明確性、合理性、実態適合性の4つの要件が必要で、労働者からの意見聴取や変更した場合の変更届出が必要となります。(とりあえず概要のみ)


 相談事例の共有化 「ご存知ですか?」……労務管理編

 ◎労働基準監督署に届出していなが就業規則は有効か?……有効である。就業規則を明示し、従業員に周知しておけば就業規則としての効力を生じます。

 ◎パート従業員の就業規則は制定しなければならないか?……正社員用の就業規則のみを制定し、パート従業員用の就業規則が無ければ、正社員用の就業規則が適用されます。

 ◎遅刻相当分の労働時間を当日の残業時間で相殺できるか?……労働時間とは、実際に労働した時間であるので、所定労働時間までは残業時間で相殺控除可能です。

 ◎代休とは?……休日労働をした後に与える休日で、代休を与える義務は無いが、代休を与えても休日労働した分については割増賃金を支払わなければ賃金不払いとなります。

 ◎振替休日とは?……休日自体を事前(前日勤務終了まで)に別の日に振り替えることで、同一週内に振り替える限り週40時間の時間内に納まるので割増賃金の支払い義務は無いが、翌週以降に振り替えると、その週の労働時間が40時間を超えるので、超えた分については割増賃金の支払いが必要となります。

 ◎「正社員と同じ仕事をしているのに、どうして給料がこんなに違うの?」とパート従業員に言われたが……労働基準法では、労働者の差別的取り扱いが禁止されています。とはいえ、禁止されている事項は「社会的身分、国籍、信条」に限定されています。「正社員」や「パートタイマー」といった身分は、社会的身分とはなりません。「男性を採用したら正社員だが、女性を採用したらパートタイマー」といった、男女雇用機会均等法に触れるような恣意的な採用で無ければ何も問題ありません。

 ◎内定を取り消したいが……これは非常に微妙な問題です。「会社の採用通知が労働契約締結についての労働者の申し込みに対して労働契約を完成せしめる使用者の承諾の意思表示としてなされたものであれば、会社の採用通知によって労働契約は有効に成立し、事後における会社の採用取り消し通知は有効に成立した労働契約解除の通知であると解されるので、この場合は労働基準法第二十条が適用される。」という通達があります。これから考えると、内定の取り消しの際には解雇予告制度が適用され、解雇予告が必要であると考えられます。

 ◎試用期間中の従業員に解雇予告は必要?……「試用期間だからいつ解雇してもいいだろう」というのは間違いで、採用してから14日以内であれば解雇予告は不要ですが、14日を過ぎると解雇予告制度が適用され、解雇予告が必要となります。

 ◎従業員に周知していない就業規則は有効か……「作成」、「意見聴取」、「届出」の一連の手続きを適法にされていれば無効ではない。

 ◎固定賃金制から変動賃金制(能力評価性)に変更できるか……就業規則の変更によって賃金変動性(能力評価性)に変更するためには、高度な必要性に基づいた合理的な内容であることが必要である。

 ◎就業規則を変更して有給の生理休暇を無給にできるか……就業規則の一方的不利益変更に当たるが、変更内容及び必要性の面から合理性があれば有効である。

 ◎定年延長により延長された期間の賃金を減額する旨の就業規則の変更は……就業規則の不利益変更に当たる。賃金という労働契約上の重要部分に関して著しい不利益を課しながら、その代替措置も設けていない就業規則の変更は、合理性を欠き許されない。

 ◎労働者の個別の同意が無い賃金の減額、時給制への変更は可能か……従業員の同意が必要である。就業規則、労働協約または労働契約にその根拠が明示されていなければならず、使用者が一方的に行うことはできない。

 ◎女性パートタイマーに深夜業務をさせることができるか……させることはできるが、制限または禁止されている法定事項がある。

 ◎正社員として定年退職後、引き続きパートタイマーとして再雇用した者は直ちに年休権が生じるか……この場合は、定年退職後はパートタイム労働者の年休規定が適用されるので、定年退職前の勤続年数と退職後の勤続年数は通算されないので、直後に年休権は生じない。

 ◎3ヵ月ごとに雇用契約を更新するパートタイマーにも年休を与えなければならないか……実質的に6ヵ月継続勤務して、その全労働日の8割以上出勤していれば年休を与えなければなりません。

 ◎使用者が労働者の年休を割り振っても良いか……年休取得の時季選択権は労働者にあります。よって使用者が労働者の意思に反して勝手に指定することはできません。

 ◎パートタイマーにも定期健康診断を実施しなければならないか……法令により常時使用する労働者については年一回以上の定期健康診断のの実施が義務付けられています。パートタイマーについても同様です。

 ◎アルバイトに休業手当の支払が必要か……必要。

 ◎派遣労働者の労災補償について、派遣先に補償責任はあるか……派遣労働者の労災は派遣元に補償責任があります。但し、派遣先の安全衛生義務違反を理由に民事上の損害賠償を求められる場合があります。

 ◎外国人労働者を雇用する場合、外国人労働者専用の就業規則を適用して問題は無いか……日本人の一般労働者に適用する就業規則を外国人労働者に適用しないことは、労働基準法で禁止している「国籍」を理由とする差別に該当し、許されません。


 まだまだ掲載していない参考としていただける事項が山ほどあります。今後も強化・増強していきます。


 当事務所がお手伝いできること。

 労務管理(人事管理を含めて)ご協力できます。労使関係を正常に保つ事が事業発展の推進力となるのではないでしょうか。しかし、労働関係法令は多種多様にわたり、法令解釈も含めると、全てをご理解いただくのは困難であると思います。経営者様、管理者様に代わって当事務所で法的チェックを施し、労務管理に遺漏の無いように対処させていただきます。就業規則の制定からかなり年数がたっていませんか?休日の付与、時間外勤務や手当て等でご不明な点はございませんか?シフト管理でお困りではないですか?労使間の軋轢で労働基準監督署等に駆け込む労働者が非常に増えています。その後の処理も大変なものとなりかねません。手遅れになる前にぜひご相談ください


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